2010年05月14日

みちくさ

槁ヶ丘学園に通う平凡な学生である主人公、嵯峨智秋(さがちあき)は小さな引っ越しを余儀なくされた。特に大きな事情ではなく、単純に家の改築工事の為である。その引っ越し先もそんなに離れているわけではなく、転校する事もなかった。――ささやかな影響はあったが。引っ越し先が山一つ越えた先にあり、都内近郊とは思えないほど拓けていない土地だったのだ。通学経路も変わり、新たな足となった単線電車だが、本数が極端に少なく、不測の事態でしばしば停車し、時にはそのまま運休となる事もあった。そして、その日、乗っていた電車が停まっても焦る者は誰もいない。もちろん智秋も例外ではなく、この空いた時間をどうするかぼんやりと考えていた。その時、視界の隅に歩いている見慣れた制服の女学生の姿が映る。けれど、ただそれだけなら、目を惹く事はなかった。彼女、日向つばめ(ひむかいつばめ)が歩いていたのは、車内の通路ではなく、――線路の上、だった!    無料体験版ダウンロード